相対性理論で有名なアインシュタイン博士が人類最大の発明は何か、という問いに対して相対性理論ではなく「複利」と言ったのは有名な話です。
発言の解釈には諸説あるようですが、元金に運用利益を含めて継続運用することで資産額(元利金合計)が大きく増加する仕組みは、その成果に着目すると、長期になればなるほど大きくなり驚きです。
以下は単利(元金のみに利子がつく)と複利(利子にも利子がつく)の比較計算例です。
元金 100万円 以後の積立なし 運用収益:年利5%
(単利) 1年後・3年後・5年後・10年後・20年後・30年後・n年後
資産額(万円) 105 115 125 150 200 250 100+5n
(複利) 1年後・3年後・5年後・10年後・20年後・30年後・n年後
資産額(万円) 105 115.8 127.3 162.9 265.3 432.2 100×(1+0.05)n
単利の30年後の資産額(元利金)は 250万円 (元金100万円、利益150万円)、
複利の30年後の資産額(元利金)は432.2万円(元金100万円、利益332.2万円)です。
新NISAの開始時期について、「複利で長期に運用することで大きな成果が得られるとしても、新NISAを始める時期として株価が高値圏にある今は危険、大きく値下がりしてからの方が良いのではないか。」
始めるタイミングとして、大きな値下がりを待つべきかどうかは、多くの方の関心事でしょう。
正確な予測が不可能であること、すなわちこれから暴落が発生するとは言えませんし、発生しないとも言えません。
ここで複利のマジックをまざまざと見せつけられるデータをご紹介しましょう。日本経済新聞社の田村正之編集委員の「新NISAの積み立て投資、高値圏でも始めて大丈夫か」(2024年2月21日、会員限定記事)です。
この田村さんの記事の中で、全世界株指数への月5万円の積み立て投資で、2008年9月のリーマンショック直前の2008年8月から始めた場合(A)と、その6ヶ月後のリーマンショック後の最安値となった2009年2月から始めた場合(B)の2023年末の資産額(MSCI・ACW「モルガンスタンレー・オールカントリーワールドインデックス」配当込み、円ベース)を比較計算されています。指数上での計算ですので実際の運用事例ではありませんが、非常に興味深い計算結果が出ています。
100年に1度の大暴落とも言われたリーマンショック、ショック後の最安値(B)は、直前高値(A)の約半値になりました。半値になってから始めた方が良さそうに思えますが、どちらの資産額が大きくなったか。
詳細は電子版記事をご覧いただきたいのですが、月5万円の積み立ての場合に、高値(A)から始めていた方が、大きく値下がりした(B)から始めた場合より資産額が増えたと計算されています。
大暴落を経験しても月5万円で6ヶ月早く投資した30万円の差が、その後の株価急回復、高値更新による運用益を長期の複利で雪だるま式に巻き込んで大暴落の穴を埋め、さらに大きな資産を形成しました。
まさに長期運用での「複利のマジック」
複利のマジックは、短期志向ではなく、長期に続けられる運用に大きなご褒美をくれているということであり、家計の安定的な資産形成を支援する目的の新NISAは、目的の範囲内にて、そのご褒美の利益を非課税とするものです。
新NISAの対象資産にはリスクがあるので、想定どおりの結果が得られるとは限りません。リーマンショック直後のように、一時的であるにせよ、半値(あるいはそれ以下)になるような損失リスクの可能性はゼロではありません。しかし、リスク資産市場の歴史が示していることは、大きな値下がりリスクは短期的には生じるが長期に続かず、リターンはいずれプラスに転じ、その後のプラスのリターンは長期にコツコツと続き、積み上がるということです。(続く)